はじめに
「またミス?ちゃんとやる気あるの?」
そんなふうに、つい心の中で感じてしまうことってありますよね。
忙しい毎日。成果も求められ、やることも山積みの中で、 同じようなミスが続いたり、報・連・相がうまく回らなかったりすると、 どうしてもイライラが募ってしまうことがあると思うのです。
「なんでこんなこともできないの?」「前にも言ったよね?」 そんな言葉が、心の中でぐるぐる回ってしまうこともあるかもしれません。
でも、実は…その“やる気がないように見える”ミスの背景には、 意外な心理的な原因が潜んでいることも少なくありません。
今回は、心理学の視点から 部下のミスにどう向き合えばよいのかを、 一緒に優しくひも解いてみたいと思います。
部下のミスに「やる気がない」と感じる瞬間
たとえば、部下に商品の発注を任せていたのに、納品日を間違えてしまった。
そのせいで必要な日に商品が届かない──。
そんなとき、つい思ってしまいませんか?
「またか…この子、やる気あるのかな?」
こうしたとき、私たちは無意識に 「ミス=その人の性格や能力の問題」と感じてしまいやすいものです。
でも、心理学ではこのような思い込みを「内的帰属」と呼びます。
つまり、「その人の内面(性格・能力)が原因である」と決めつけてしまう見方です。
たとえば「やる気がないのではないか」であったり「サボっているのではないか」であったり
「仕事への熱意や誠意がないのではないか」であったり・・。
私にも経験があります。
責任感がないから、そんなミスをしちゃうんだろ!って
内心、部下を責めていたこと^^;
もちろんね、全く関係ないとは言えないのですが・・
それだけでは、本当のミスの原因を見落としてしまうこともあるのです。
ミスの裏にある“本当の理由”を見てみよう
たとえば、この「きっとこうだろう」という視点を外して、現場を見てみたとき、新たな発見をしたことがあるのです。
たとえば、発注のミスをしてしまった「本当の理由」
✔ 伝票の記載方法が複雑で、誰がやっても間違えやすかった
✔ 日々の業務に追われ、確認する余裕がなかった
✔ 上司の指示の意図がうまく伝わっていなかった
✔ チームの協力体制がうまく機能していなかった
✔ プライベートでのストレスや不安を抱えていた
──これらはすべて、実際に私が出会ってきた現場での事例です。
複数関係していることもあれば、致命的に大きな影響を与えているものもありますが
私たちが見ている「ミス」は、 氷山の一角のようなもので、
その下には、“やる気”では片づけられない背景が隠れていることが多いのですよね^^;
見えない部分にこそ、その人の「精一杯」があるのかもしれません。
特に責任ある立場にいる方ほど、
「ちゃんとやらなくては」「結果を出さなくては」と 自分自身にも強くプレッシャーをかけていることが多いもの。
だからこそ、誰かのミスがあると、自分の責任のように感じてしまったり、 自分の感情を持ちこたえることが難しくなることもあると思うのです。
それは決して、心が狭いわけでも、器が小さいわけではなく
真剣に向き合っているからこそ。
だからこそ「もっとしっかりやってよ」気持ちの問題でしょって、言いたくなっちゃうところではあるのですが・・
同じように、部下は部下なりに「精一杯やっていての今」があるのかも、しれませんね。
リーダーが意識できる“3つのまなざし”
では、ここからは「お互いにベストを尽くして、いい仕事をやっていく」ために、リーダーポジションの方が心がけておくといいことを心理学的な視点からご紹介しますね。
あなたの思いが、大切な部下にも届くように。
よかったら試してみてくださいね。
1. 行動ではなく「背景」に目を向ける
何が起きたのかだけでなく、「なぜそうなったのか?」という背景に 優しく目を向けてみましょう。
たとえば「確認漏れをした」だけでなく、 確認できない状況だったのかもしれないのです。
「こんな簡単なこと、どうしてできないの?」という視点から、 「何があって、できなかったんだろう?」と問いを変えるだけで、 相手に対する見方も、自分の気持ちも、少し変わってくるかもしれません。
2. 安心して話せる場をつくる
ミスの報告って、誰でも怖いですよね。
でも「話せる安心感」があると、本人も自ら改善のヒントを見つけやすくなります。
「怒られるかも」と思えば、人は隠したくなります。
でも、「ちゃんと聞いてもらえる」と感じられると、 人は、自分から心をひらいてくれるものです。
責める前に、まず「どうしたらよかったかな?」と 一緒に考える姿勢を持つことが、関係性を育ててくれます。
3. 小さな“うまくいっている”を拾う
人は「うまくいったこと」よりも「できなかったこと」に目が向きやすいもの。
でも、小さな成功や努力に目を向け、声をかけてあげることで、 信頼感とやる気が自然と育っていきます。
「ありがとう」「助かったよ」「気づいてくれて嬉しかった」 そんな一言が、チームの空気を変えていくこともあるんですよね。
チームが育つ“ミスとの向き合い方”
ミスが起きたときこそ、チームが成長するチャンスです。
「正す」よりも「育てる」関わり方を意識してみると、 あなた自身の気持ちも少し軽くなるかもしれません。
リーダーであるあなたが、日々、どれだけ気を配り、 言葉を選び、感情を整えて関わっているか。
私は、その努力に、心から敬意を抱いています。
もちろん、リーダーであるあなたも、 完璧である必要はありませんよ。
自分を責める前に、まずはご自身にも優しく。 立ち止まる時間や、誰かに話す機会を持つことも、大切なケアです。
おわりに
部下のミスに対してイライラしてしまったり、 自分の関わり方にモヤモヤすることもあるかもしれません。
でも、そんなふうに「どうにかしたい」と感じられるあなたは、 すでにとても素晴らしいリーダーです^^
人を育てるって、すごく大変なことですよね。 信頼関係を築くにも、根気が要ります。
リーダーなんてたいへんな役割、できれば引き受けたくなんてなかった。
そんな方だっていらっしゃると思うのです。
でもそれは、あなたの素晴らしさでもありますね。
だからこそ、うまくいかないときには 誰かと一緒に考える時間が、心の余白を取り戻すきっかけになるかもしれません。
カウンセリングでは、 リーダー自身の気持ちを整理したり、 部下との関わり方を一緒に考えるサポートもしています。
あなたの大切なチームが、もっとあたたかく、信頼でつながっていけますように。 そんな想いで、いつも応援していますね。
