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服部希美
心理カウンセラー/講師
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「忘れられない」のは弱いからじゃない。大切に愛してきた人や場所を手放せない心理

「もう別れてから何ヶ月も(あるいは何年も)経つのに、まだ相手のことを考えてしまう。」
「周りからは『もう次に行きなよ』って言われるけれど、どうしても忘れられない。」

そんなとき、私たちは自分のことを「心が弱いのかな」「未練がましくて格好悪いな」と、責めてしまいがちですよね。

でも、本当にそうなのでしょうか。

私は、心理カウンセラーとして多くのカウンセリングでお話を伺うなかで、いつも別のことを感じているんですよね。

今回は、大好きだった人や場所を手放せない心の裏側にある心理と、
傷ついた心が少しずつ回復していくロードマップについてお話ししていきます。

服部希美

いつもお読みいただき、ありがとうございます。
心理カウンセラー 服部希美です。

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目次

人は、大切な人や場所との関わりを「心の中に抱えながら」生きている

私たちは、大切な人や場所、仕事に対して、
自分の時間やエネルギー、そして「愛情」をたくさん注ぎ込んで生きています。

人は、大切に思ってきたものを失うと、心が深く痛みます。

私たちは、どうでもいいものに対して執着することはありません。
昨日すれ違っただけの人のことや、興味のない世界のことを、何ヶ月も思い悩むことはないですよね。

失恋だけでなく、手の届かなかった夢、入れなかった世界、諦めざるを得なかったキャリアや居場所――。

私たちは人に対してだけでなく、「自分がどうしても届きたかった場所」に対しても、同じように激しい喪失と執着を抱えることがあるのです。

大切に思えば思うほど、失ったときの悲しみが大きくなるのは、とても自然なこと。

つまり、「忘れられない」という痛みそのものが、
あなたがどれほど深く、純粋に愛していたかという『愛の証明』でもあるのですよね。

それほど大きな存在だった人や場所、夢を「今日から忘れます」なんて、きれいさっぱり心の中から消し去ることはできないのは当然のことだと思いませんか?

むしろ、すぐに気持ちを切り替えられないほうが、ごく自然な心の反応なのですよね。

人は、大切な人や場所との関わりを、そうして心の中に抱えながら生きているものなのです。

心が喪失を受け入れるまでの「4つのステップ」

失ったあとに訪れる、深い悲しみ、涙、怒り、無力感、激しい後悔。
これらはすべて「悲嘆(グリーフ)」と呼ばれます。

この苦しい感情の波は、心が壊れてしまったサインではなく、むしろ逆です。
「大きすぎる現実の痛みを、心が一生懸命に処理し、時間をかけて治そうとしている健康な反応」だったりします。

いわば、怪我をしたときに、傷口が熱を持って修復しようとするのと同じ心の自浄作用です。

大切で、本当に大好きだった存在を失ったとき、
私たちの心は、ある「決まったプロセス」を経て少しずつ回復へと向かっていきます。

心理学ではこれを「喪失のプロセス(グリーフワーク)」と呼び、大きく分けると4つの段階があると言われています。

今の自分がどのあたりにいるのか、そっと照らし合わせながら読んでみてくださいね。

1. 衝撃と麻痺の時期(ショック期)

喪失の直後、現実があまりにも受け入れがたく、涙すら出なかったり、どこか他人事のようにボーッとしてしまったりする時期です。
心が大きすぎる痛みからあなたを守るために、一時的に感覚を麻痺させてくれています。

2. 怒りと探求の時期(パニック期)

現実が少しずつ押し寄せ、「どうしてこんなことになったの?」「あの時こうしていれば…」と激しい後悔や怒り、寂しさが波のように押し寄せる時期です。

実は、一番「執着」が強くなりやすいのがこの時期です。
心が必死に、失ったものを探し求め、時間を巻き戻そうとしている状態です。

3. 諦めと抑うつの時期(引きこもり期)

「もう本当に、あの人は戻ってこないんだ」「もう、あのときには戻れないんだ」など、
現実を理解し、深い悲しみや無力感に包まれる時期です。

一見、状態が悪化したように思えますが、実は心がようやく「喪失という現実」を受け入れ始めた、とても大切な通過点です。
ここでたくさん涙を流し、悲しむことで、心は次のステージへ進む準備をします。

4. 再生と再組織の時期(立ち直り期)

悲しみの波が少しずつ穏やかになり、気づけば前を向いて歩き出せるようになる時期です。
相手の存在が「幸せを願う、愛する人」「かけがえのない思い出」へと変わったり、いままでの努力を認められるようになったり・・
自分の人生の新しい選択肢に目が向くようになります。

らせん階段を登るように、心は癒えていく

このプロセスは、階段を一段ずつ綺麗に登れるわけではありません。

「もう大丈夫かな」と思ったら、また2の激しい寂しさへ戻ったり、3の悲しみに沈んだりしながら、
らせん階段を登るように、一進一退を繰り返して進んでいくものです。

だからこそ、「また思い出しちゃった、逆戻りしちゃった」と自分を責める必要は全くないのです。

あなたの心は今、それほど大きな喪失を一生懸命に処理し、癒そうと頑張っている最中なのですからね。

失恋や挫折の本当の辛さは、「愛することをやめなければならない辛さ」

ここで、少し視点を変えてみましょう。
なぜ、「喪失体験」が、これほどまでに苦しいのでしょうか。

それは、ただ「相手を失ったから」だけではありません。
本当の辛さは、「溢れあまる愛情を、止めなければならないこと」にあるのではないでしょうか。

たとえば、あなたがケーキが大好きだったとしましょうね。

3度のご飯よりも、ケーキが好き。

その大好きなケーキを、ダイエットのために食べないようにしなきゃいけないとしたら。
もう、食べることができないとしたら。

すごく辛いと思うのですよね。

心のなかに溢れている愛情を、
「もうあの人に向けてはいけない」「これ以上愛してはいけない」と、無理やり堰き止め、強制終了しなければならないこと。

この、行き場を失った愛のエネルギーのやり場なさこそが、執着という強い痛みの正体でもあるのです。

だからこそ「手放す」と考えたとき、私たちはどうしても
「相手を嫌いにならなきゃ」「もう愛するのをやめなきゃ」と思いがちです。

「あれは、意味のなかったものだ」
「離れたのは、仕方がなかったんだ」

そうやって、愛を止めようとしてしまうのですね。

けれど、愛することをやめようとすればするほど、心は行き場をなくして苦しくなってしまうのです。

だって、本当は・・
心の底から、愛しているから。

ですから、喪失の傷が癒えていく中で、
こんなことを取り組んでいくことも少なくなかったりします。

「もう一度、本当の意味で愛そうと思ってみること」

手放すために愛するのをやめるのではなく、
むしろ『愛し方』を変えて、もう一度新しく愛し直してみるのです。

そのために必要なのは「自己価値を取り戻していくこと」

ただ、心が傷つき、ボロボロになっているときに「もう一度、愛そう」としても、とても難しく感じられるかもしれません。

なぜなら、相手やその場所に強く執着しているとき、私たちの「私には価値がある」という感覚(自己価値)は、すっかり相手の言動や「愛されているかどうか」「うまくいったかどうか」という結果に預けられてしまっているからです。

自分を「愛されなかったダメな存在」「うまくいかなかったダメな存在」だと思ったままで相手を愛そうとすると、それはただの「我慢」や「自己犠牲」になってしまい、さらに心が削られてしまいます。

かといって、むりにポジティブシンキングをする、というのも正直、悲しみを引き延ばしてしまうことになりかねません。
ポジティブな言葉で、今ある痛みに蓋をしてしまう必要はないのです。

だからこそ、まずは見失ってしまったあなたの価値を、
あなた自身の手元にしっかりと取り戻していくことが何よりも大切になります。

「私は、あの人のことを懸命に愛してきた」
「私なりの、愛や優しさ、頑張りがあった」

結果がどうであれ、あなたが注いできたそのプロセスは紛れもない事実。

あなたは、これほどまでに、懸命に愛してこられたのですからね。

それほどまでに誰かを、何かを愛することができた、あなたを大事にしよう

これほどまでに誰かや何かを大切に想い、愛し抜くことができたあなたは、
ものすごく豊かで、温かい心の持ち主です。

あなたが全力で恋をしたこと、全力で憧れ、手を伸ばしたこと。

その美しいプロセスは、たとえ形を変えたとしても、
あなた自身の価値として、必ず、これからの人生にずっと残り続けます。

まずは、それだけ何かを愛せたご自身の心の美しさを、そっと愛おしんであげてくださいね。

あなたのその豊かな愛のエネルギーが、いつかまた新しい未来を優しく照らす日が必ず来ます。

この、喪失のプロセスは、ひとりで取り組むのは、とてつもなく大変ですのでね^^;
お気軽に、カウンセリングもご活用くださいませ。

ひとつひとつ、丁寧に。大切にしていきましょうね。

次回のシリーズ第2回は、
背景②である「満たされなかった思いが残っているから」について、
心の仕組みを詳しく紐解いていきます。どうぞお楽しみに。

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