好きな人の前で、わざと素っ気なくしてしまう。
相手が優しくしてくれるほど、なぜか試すようなことを言ってしまう。
本心ではないのに別れをほのめかして、引き止められることで、愛情を確かめようとしてしまう。
頭ではわかっているんです。素直になったほうがいい、って。
こんなことをしていたら、相手が離れていくかもしれない、って。
それでも、やめられない。
もしあなたが、そんな自分に疲れているなら。
どうして、試すようなことをしてしまうのか。 あなたの心の奥を、のぞいてみるといいかもしれませんね。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
心理カウンセラー 服部希美です。
「試す」のは、信じられないからじゃない
「試し行動」という言葉があります。
相手の気持ちを、わざと確かめるような行動のことです。
冷たくしてみたり、わがままを言ってみたり、わざと困らせるようなことをしてみたり。
それでも相手が離れていかないかを、無意識のうちに確かめている。
こういう言動のことを、心理学では「試し行動」なんて言ったりします。
これを聞くと、「相手を信じられない自分が悪いんだ」と思う人がいると思うんですよね^^;
でもね、ちょっと待ってください。
実は、相手を試してしまうのは、相手を信じていないからではないんですよ。
むしろ逆で——
信じたいのに、信じてしまうのが怖いから、なんですよね。
だって、信じてしまったら。
もし裏切られたとき、立ち直れないほど傷つくかもしれない。
だったら、先に確かめておきたい。
「この人は、本当に大丈夫?」って。
傷つく前に、たしかめておきたいんです。
試し行動の根っこは、疑いではありません。
心から、その人を信じたいと思っている証拠でもあるんですね。
どうして、好きな人ほど怖くなるのか
不思議なことに、私たちは、どうでもいい相手は試しません。
試してしまうのは、いつも、本当に大切な人。
失いたくない人。 心の深いところに入ってきた人だけです。
それは、なぜでしょう。
それは・・・大切であればあるほど、失うのが怖くなるからです。
たとえば、こんなふうに考えてみてくださいね。
あなたは、ずっと欲しかったグラスを、やっと手に入れました。
そのグラスはとってもきれいで、簡単には買えない、特別なもの。
手荒に扱ってしまったら、壊れてしまいそう。 そんな、大切な大切なもの。
このグラス、あなたは使えますか?
うれしいはずなのに、棚の奥にそっとしまってしまう。
割れるのが怖くて、使えない。触れることすらできない。
そんな方も、いらっしゃるのではないでしょうか。
好きな人に素直になれないとき、 心の中で起きているのは、これに近いことなのかもしれません。
大切すぎて、近づけない。
失うのが怖くて、先に距離をとってしまう。
「どうせいつか離れていくなら、本気にならないほうがいい」
「期待して裏切られるくらいなら、最初から期待しないほうがいい」
そんな声が、心のどこかで聞こえていないでしょうか。
試したくなるのは、「愛されている自信」がないから
ここで、もう少し奥のほうまで、一緒にのぞいてみましょうね。
試してしまう。素直になれない。確かめずにはいられない。
この行動の根っこには、たいてい、こんな思いが隠れています。
「私なんて、本当は愛されるような人間じゃない」
愛されている自信があれば、わざわざ試す必要なんてないんですよね。
相手が「好きだよ」と言ってくれたら、「うん、知ってる」と受け取れる。
少し連絡が途切れても、「忙しいのかな」と思って、待っていられる。
でも、自分のことを「愛されるに値しない」と感じていると、そうはいかないんです。
相手の「好き」を、そのまま信じられない。
「本当に? 気をつかってるだけじゃない?」って、疑ってしまう。
だから、何度でも、形にして見せてほしくなる。
「これだけ冷たくしても、まだ好きでいてくれる?」
「別れるって言っても、引き止めてくれる?」
そうやって相手に証明してもらうことで、ようやく、ほんの少し安心できる。
でも——その安心は、長くは続かないんですよね。
明日になれば、また不安がやってくる。
だから、また確かめたくなる。
渇いた喉に、海の水を飲むようなものなんです。飲んでも飲んでも、満たされない。
どうして、自信が持てなくなったんだろう
では、その「愛されている自信のなさ」は、どこから来ているのでしょう。
ひとつは、過去の恋愛の傷かもしれません。
前の恋人に、ある日突然、去られてしまった。
あんなに「好きだ」と言ってくれていたのに、気づいたら気持ちが冷めていた。
信じていたぶん、裏切られたときの痛みが、深く残っている。
その経験が、心のどこかに、こんな思いを刻んでしまったりします。
「信じたら、また同じ目にあうかも」
頭では「この人は違う」とわかっていても、体が勝手に身構えてしまう。
過去の痛みが、目の前の人にまで、投影されてしまうんですね。
そこには、傷ついた悲しみの大きさだけ「許せない」という思いがあることが多いです。
許せないのは・・突然自分を置いていった相手だけではなく・・自分自身。
この絡まりを解くためには、感情の整理を丁寧にしながら
「許していく(とらわれから、自分を助けてあげる)」ことが大切になってくることが多かったりしますね。
自分を愛せていない
そしてもうひとつ。
もっと根っこにあるのは、「自分で自分を愛せていない」ということです。
自分のことを、好きになれない。
自分の価値を、自分では認められない。
だから、その「足りない部分」を、相手の愛で埋めようとしてしまう。
相手が愛してくれることだけが、自分の価値の証明になる。
でもね。 自分で自分を「OK」と思えていないと、どれだけ相手に愛されても、心の穴は塞がらないんです。
だって、いちばん身近な「自分」が、いちばん自分を信じていないのですからね。
どうして自分をそんなに嫌ってしまうのでしょうか?
どんな理由があって、そんなに自分を罰しているのでしょうか?
一体いつから?どんなことがあって?
一度立ち止まって、自分の心に耳を傾けてみるのも大事だったりしますね。
「どっちなの?」と、白黒つけたくなる
それから、こんな気持ちも、混じっているかもしれません。
「好きなのか、嫌いなのか。はっきりさせてほしい」
宙ぶらりんの状態が、苦しくてたまらない。
「たぶん好かれてる、と思う」くらいの曖昧さに、耐えられない。
だから、わざと相手を困らせて、極端な反応を引き出そうとする。
怒らせてみたり、突き放してみたり、試すようなことを言ってみたり。
そうやって、白か黒か、はっきりさせようとしてしまうんですよね。
でも、恋愛も、人の心も、
本当は、白でも黒でもないグレーの中にあるもの。
「だいたい好き」「たぶん大丈夫」
そのくらいの曖昧さを、抱えていられること。
それも、安心して人を愛していくための、大切な力なんです。
試したあと、いちばん傷ついているの
そして、もうひとつ、いや
いちばん大事なことは・・・
試し行動をしてしまったあと、いちばん傷ついているのは、たいてい、あなた自身だということです。
相手を突き放したあと。
わざと冷たくしたあと。
別れをほのめかして、引き止めてもらったあと。
その瞬間は、少しほっとするかもしれません。 「ああ、まだ好きでいてくれてる」って。
でも、しばらくすると、じわじわと、別の気持ちがやってきます。
「どうして、あんなことを言っちゃったんだろう」
「素直になればいいのに、また同じことをしてる」
「こんな私、めんどくさいよね。嫌われても、しかたない」
そうやって、自分で自分を責めて、また少し、自分のことが嫌いになる。
確かめたかったはずなのに、
確かめるたびに、自分への信頼が、少しずつ削れていく。
これが、試し行動のいちばん切ないところなんです。
愛されたくてやっていることなのに、その行動が、自分を「愛されない人」のほうへ、少しずつ追い込んでしまう。
だからこそ、ここで一度、立ち止まってみてほしいんですよね。
「試さなくても大丈夫」と思える日まで
では、どうしたらいいのでしょう。
「素直になろう」「もう試すのはやめよう」
そう自分に言い聞かせても、たぶん、あまりうまくいかないかもしれません。
だって、頭ではわかっているのに、やめられないのが、このパターンですから。
だから、まずは、ひとつだけ。
試してしまったあとに、自分を責めるのを、やめるところからはじめてみましょうね。
「またやっちゃった」
「どうして素直になれないんだろう」
そう自分を責めるたびに、心はもっと縮こまります。
縮こまった心は、もっと身構えて、もっと試したくなる。悪循環なんです。
そうじゃなくて、こんなふうに、声をかけてあげてほしいんです。
「そっか。怖かったんだね」
「失いたくないくらい、好きなんだね」
試してしまう自分を、責めるのではなく。
その奥にある、こわがっている自分に、気づいてあげましょうね。
それから、もう少し進みたくなったら。
その恐れが、いったいどこから来ているのかを知って、心のパターンそのものを、ゆっくり変えていくこともできます。
ただ、この「根っこ」の部分は、自分ひとりではなかなか見えにくいんですよね。
試してしまう自分を責めながら
「どうして?」と自分に問いかけても、
出てくるのは「わからない」だけ、ということも多いんです。
だから、誰かと一緒に、その奥をのぞいていくほうが、ずっと早いし、ずっとやさしいんですよ。
カウンセリングの得意分野でもありますから、よかったら、お話、お聞かせくださいね。
最後に・・。
相手を信じることができない。疑ってしまう。 そんな自分を責めていらっしゃる方は、ちゃんと、人を愛せる人です。
愛することがこわいくらい、誰かを大切に思える人です。
試してしまうのは、いいかげんに人を好きになれない、その証拠でもあるんですよ。
愛情深いあなたが、大切な人と、安心して愛し愛される関係を築けますように。
参考になれば幸いです。


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