「どうしても、この人が苦手だな」
毎日を過ごす中で、そういった「苦手な人」と出会うことはありますよね。
職場やサークル、コミュニティなど、
どうしても関わらなければならない相手が「苦手な人」だった場合、
どのように付き合っていったらいいか、困ってしまうこともあるかと思います。
苦手な人との関係、と一言で言っても状況はみなさん違いますから
身の危険を感じる場合は、物理的に離れたり
然るべき人や場所に相談していただけたらと思うのですが
今回は「自分の心と向き合う」方向で、
心を守りながら上手に付き合う方法を、心理的な視点からお伝えしていきますね。
「苦手」と感じる3つの背景
自分の心と向き合うことで、状況を和らげていきたいと感じたときに
「もつといい視点」がひとつあります。
それは、私たちが苦手な人の前にいると苦しいのは、
その人そのものが苦手、というよりも、
その人を前にしたときに生まれる「自分の心の反応」が辛い、という視点です。
たとえば、同じ言動を見聞きしたときに
みんながみんな、同じ反応をするのかというと、そうではないことって、ありますよね。
その人そのもの、に意味があるというよりも
その人を前にして感じる感情が、なにかしら不快である。
では、その心の反応はどこからきているの?
という視点で紐解いていくと、心の整理がつきやすかったりするのです。
例えば“苦手だな”という感情の大元には、こんな背景があることが少なくないようです。
1. 相手に“自分の抑えた部分”を映している
たとえば、感情表現が豊かな人や甘え上手な人を見て、
「なんか苦手だな」と感じること、ありませんか?
「なによ、責任感がないわね!」
「社会人として、大人としてどうなのよ!」
そんなときには、あなたの中にも
“本当はそうしたい”気持ちが眠っているのかもしれません。
たとえば今まで、しっかりしなきゃ、甘えちゃいけないと
我慢してきた人ほど、相手の自由さに反応してしまったりします。
このタイプの苦手意識は、「自分の内側を映す鏡」としてやってきた相手。
ちょっとモヤっとしたその感情の裏には、
禁止と「私も、こんなふうに生きたい」という“本当の自分の望み”が隠れていることが多かったりします。
こういう場合は、自分に禁止して来たことを許し、自分の本当の望みを叶えてあげることで、苦手意識が薄らいでいくことが多いようですよ。
2. “境界線を越えてくる”タイプ
たとえば、相手が悪気なく距離を詰めてきたり、
「次いつ会える?」「今何してるの?」と
こちらのペースを尊重せずに関わってくると、私たちは無意識に緊張します。
「え?そこまで踏み込んでくるの?」
実は、私たちの心にも「パーソナルスペース」というものが存在するんですよね。
パーソナルスペースとは、
「他人にこれ以上近づかれると不快に感じる範囲」のこと。
物理的な距離だけでなく、心の近づき方・踏み込み方にも、この感覚は存在します。
たとえば、まだ関係が浅いのにプライベートな話を深く聞かれたり、
一方的に好意を押しつけられたりすると「なんとなく居心地が悪い」と感じますよね。
それは、あなたの“心理的なパーソナルスペース”が侵入されているからなんですね。
この距離感というのは人それぞれ違っていて、
同じ距離感でもAさんは「遠くて寂しいな」と感じるけれど、Bさんには「近すぎる」と感じたりもします。
悪気なく距離感が近くて踏み込んでくる人、というのもいらっしゃるのが現実ではあるのですが
恋愛では特に「相手に合わせる癖があったり、顔色を伺う癖がある」方ほど、このタイプに巻き込まれやすい傾向があるようです。
こういうケースは「一歩、ひくこと」が大切。
「心の距離をちゃんと取ってもいいよ」
「私は私を守っていいよ」って、自分に許可を出してあげてくださいね。
また、ひとりで抱え込んでしまうと、悩みが深刻化しやすいパターンでもありますので、困ったときには信頼できる人に相談をすることも大切ですよ。
3. “過去の痛み”を思い出すタイプ
誰かと話していると、なぜか心がざわつく、怖くなる、逃げたくなる――。
そんなとき、実は“昔の傷”が反応していることがあります。
たとえば「優しくしてもらっているのに、なぜか、嫌な気持ちになる」
「いい人なのに離れたくなる」そんなときには、
誰かに冷たくされた経験、拒絶された記憶、見捨てられた寂しさが浮上して来ていたり
心の奥で「また同じ痛みを味わうかもしれない」と怖さを感じていることがあります。
私たちは、本当に欲しいものを目の前にすると
その手前で傷ついた気持ちが浮上してくることがあるのですね。
「本当に大丈夫?」「また、傷つくんじゃない?」
こういうときは、自分のケアをしながら
「今の相手は、あの人とは違うから大丈夫だよ」と、少しずつ心に教えてあげられたらいいですね。
また、過去に怖い思いを経験された方の場合は
「また私は、私を守れないのではないか」と感じて、
過剰に怯えすぎてしまうケースもあるかもしれません。
いわば“今”の出来事というより“昔の記憶”が刺激されている、状態です。
こういう場合は、怖くて悲しい思いをした自分にまず寄り添ってあげましょう。
「怖かったね」
「あなたは悪くないよ」
「私があなたを守ってあげるからね」
そして、すこしでも安心できる人とつながってみてください。
怖さを受け止めてもらったり、ほっと安心できる人との時間を積み重ねていくことで、
だんだんと怖れが和らいできますからね。
上手に距離をとるための3つのステップ+α
カウンセリングでもよくお聞きするのが、
「苦手な人のことを受け入れなきゃ」と
無意識に、自分を追い込んでいらっしゃるケースです。
たとえば、先ほどの2の例。
自分のパーソナルスペースに踏み込んできちゃう相手に対しては
適切な距離を取っていいわけですよ。
でもね、そういう状況だったとしても。
多くの人が、誰かとの関係が苦しいとき「私が悪いのかも」と自分を責めていたりするのです。
表面的には「あんなヤツと、やってかなきゃいけないのが嫌!」って感じていても
心の奥底では「本当はイヤだなんて感じちゃダメなのかな。相手を受け入れいなきゃいけないのかな」って感じている。
こういうことって、少なくなかったりするんです。
それだけ、愛したいという気持ちが強かったりするのですよね。
こういうときには、無理に相手を嫌いになろうとしなくても大丈夫ですから
お互いにとって「いい距離」を作っていきましょうね。
1,「嫌な気持ちになった私」を否定しない
人との関係でモヤッとしたり、腹が立ったり、悲しくなったり。
そんなとき、「こんなことで気にしちゃダメ」と自分を責めてしまう人は多いんです。
でも、どんな感情もあなたの“センサー”。
嫌だと感じたら、無理にポジティブに変えようとせず、
「そう感じた自分」を優しく受け入れてあげることから、はじめていきましょう。
2,「優しいままで線を引く」意識を持つ
ぐいぐい近づいてくる人に対して
「嫌な顔をしたら悪いかな」「誘いを断ったら傷つけるかな」
と感じてしまう方は、とても優しい人なんです。
でもね、苦手な人と接する時に大切なことは、お互いの心を大切に扱うこと。
・無理をしていることは断る
・距離を置く
・イヤなことには反応しない
・受け流す(真に受けない)
「優しいままで、線を引く」ことを、意識してみましょう。
また、相手の感情を全部背負うより、
「相手にも感情がある。私にも感情がある」と線を引くことで、健やかな関係が保てます。
お互いの間に線を引くことは、お互いを守ることにもなりますからね。
3,「人前ではフラットに、二人きりは避ける」
相手が異性の場合、
二人きりの空間は誤解を生みやすい場所になります。
会話が必要なときは、第三者がいる場で話す、
またはオープンスペースを選びましょうね。
「話すこと自体を拒否する」のではなく、“場を選ぶ”ことで自然に距離を取る。
それだけでも、心の消耗がぐっと減ります。
身近に協力してくれる人がいる場合は、その人を交えて過ごす、というのも効果的。
また、できるだけフラットに接することが、心の距離を作りますよ。
+α:いざというときの対処法を考えておく
苦手な人と関わる上で「こうなったらイヤだな」と感じることってありますよね。
「こんなことを言われるかも」「こんなことをされちゃうかも」「こんなふうになったらイヤだな」
まだ起きてはいないし、起きてほしくないことだけれど・・
私たちは「怖れを回避しよう」とすればするだけ、
怖れに囚われすぎてしまったりしますね。
そんなときには、具体的に
「もし、そうなったら、どう対応しようか」対処法を考えておくといいかもしれません。
たとえば・・
・「イヤな気持ちになった日には、お風呂にゆっくり浸かってデトックスする」と決めておく。
・「苦手な人と頑張って接した日には、ご褒美におやつを食べる」と決めておく。
・「苦手な人とはプライベートな話はしない」と決めておく。
そういったものでもいいですし
・「もし苦手な人から何か言われたら、すぐにOOさんに相談する」と決めておく。
・自分の中で「ここまではOK。これ以上のことはNG」という線引きを決めておく。
(NGだった場合、どのように行動するか決めておく)
・逃げてもいい、辞めてもいい、という選択肢をもっておく。
こういう感じでもいいかなと思います。
自分の中の怖れが具体的になるだけでも、気持ちが軽くなることもありますし
具体的な対処法を用意しておくだけでも、心の安心に繋がりますからね。
「苦手」と感じる気持ちは、あなたの心を守るために生まれたもの。
苦手意識を持つこと自体を嫌ってしまう方もいらっしゃるかもしれませんが
まずは、その感覚を信じてあげることが、本当の意味での“自己理解”かもしれませんね。
そして、あなたが自分を守ることは、弱さではなく
人といい関係を築いていくために必要なことでもあります。
あなたが安心していられる場所から、
やさしい関係を育てていけますように。
困ったときには、どうぞお気軽に
カウンセリングもご活用くださいね。
参考になれば幸いです。


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